妖の王子さま



残された蒼子は、ズルズルとその場に座り込む。
唇を抑え、乱れた息を整える。




キス、された。




あんなに、何度も何度も、求められるようにされるキスは、初めてだった。




「白玖・・・」




胸が高鳴る。
もっと、と思ってしまった。

白玖が、自分を求めてくれることが嬉しかったのだ。



しかし、同時に怖くなった。




白玖が、どういうつもりで求めてくれたのか。
自分も、他の妖たちと同じで、ただの、暇つぶしだったら・・・。



女のところを渡り歩く、その中の一人にすぎなかったら。




そんな不安が、溢れだしたのだ。





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