妖の王子さま
「貴様の噂は聞いている。怪我が治せるのだろう?その力、我が有効に使ってやろう」
危険を感じ逃げようと後ずさる蒼子の腕をすかさず掴み上げる。
「ああっ」
苦痛に顔を歪ませ、蒼子は抵抗するが、朱鬼の力は強く逃れられない。
引きずられるようにして、蒼子は連れ去られる。
蒼子が連れてこられたのは、とある小屋の中。
その中には無数の妖怪が傷だらけで倒れていた。
「・・・っ」
息をのむ蒼子を、その中に押し込むと、朱鬼は扉を固く締めた。
小屋の中には小さなうめき声があちこちで上がっていた。
「これまでの戦などで傷ついた妖たちだ。お前の力で救え」
「・・・っそんな」
とんでもない数だ。
傷も軽いものから重度のものまで様々。
蒼子は、朱鬼をすがるような思いで見た。