妖の王子さま
「生まれながらに強力な妖力を持っていて、その姿も美しく、戦う姿さえも妖艶で・・・、白玖さまこそが、この世界の王に相応しいんだ!」
「・・・世界の王」
妖の世界のことなんてわからない。
戦う姿なんて、見たこともないし。
妖力があるとか、相応しいとか、蒼子には興味もない話だった。
「だからこそ、悪しき天狗と鬼は滅さなければならないんだ」
メラメラと燃え上がる気持ちを昂らせ、志多良は訴えた。
「きっと、蒼子も白玖さまに会えば分るよ!あの人の偉大さが!」
「・・・そうかな」
わかりたくもない。
自分をこんな目に遭わせる根源。
そんな人物を、偉大だとすごいのだと讃えられるわけがない。
嫌悪感しかわかない。
どうしてこんな目に。
そんな思いしか、浮かんでこないのだ。