妖の王子さま
「手始めに、我の傷から治してもらおうか」
朱鬼は、蒼子の視線も知らぬふりを通し、グイッと自分の傷ついた腕をつき出した。
有無を言わさぬ高圧的な態度に蒼子は身体を震わせる。
「早くしろ」
低い声ですごまれ、蒼子は震える手でそっと触れた。
ビクッと体を震わせ、痛みを感じる身体。
目を閉じて耐えていると、朱鬼の驚きの声が聞こえる。
「なるほど、これはすごい力だ」
喜びの声をあげた朱鬼は、傷のなくなった腕を掲げ愉しそうに笑った。
代わりに痛みを受け取った蒼子は、青ざめながら恐怖と戦う。
「なにを休む。さっさとお前の役割を果たせよ」
すごむ声に身体を震わせる。
「今すぐ斬り捨ててやってもいいんだぞ」
抵抗できない。
そう感じた蒼子は、震える身体を何とか抑え込み、妖のもとに寄った。
泣きたくなる心を抑え、傷を受け入れていく。
増えていく傷と痛みに、耐え切れず涙が溢れる。