妖の王子さま

血に染まった桜色




バキバキッ!!


大きな音を立て、扉が破壊された。
朱鬼は眉を顰め掴み上げていた蒼子の髪を手放す。
その場にドサッと倒れこんだ蒼子は、力なく目を閉じ浅い呼吸を繰り返していた。




「なんだ」



怪訝な瞳を、扉が崩れ落ち埃をあげる方へと向ける。




「姑息なこと、やってんじゃねぇか」



ドスのきいた声が響き渡る。



「こんな祭りの夜に、汚ねぇことしてんじゃねぇよ!」



煙が落ち着き、姿を現したのは、天狗の長のいずなだ。
いずなは、横たわる蒼子を視線に入れると眉を寄せ険しい顔で朱鬼を睨みつけた。




「汚い?バカなことを言ってくれるな。我は、美しいものしか好まん」

「どこがだよ!だまし討ちみてぇなことして俺の部下を傷付けてくれたくせによぉ」

「だまし討ち?これも作戦のうちさ。バカげた祭りに羽目を外している馬鹿どもを消す。それのどこが、いけないんだ」



ケラケラとおかしそうに笑う朱鬼。
いずなは苛立ちを隠せず、思い切り床を殴りつけた。




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