妖の王子さま


「次は、貴様のその腹に穴をあけてやる」

「・・・ふ、血の気が多い奴だ。美しくないね。だが、我らは引かせてもらうよ」




見下すように笑うと、朱鬼は辺りに目配せをする。
いずなは、ハッとして朱鬼を追うのをやめ横たわる蒼子に駆け寄った。




「せっかく、傷が治ったのだからね。これ以上深追いはやめてもらうよ」




その言葉を残し、朱鬼はその小屋を破壊し逃げた。
間一髪蒼子を小屋の外に連れ出したいずなは、朱鬼が逃げた方向を見つめる。



「・・・追わなくていい」



家来たちにそう告げ、いずなはぐったりと横たわる蒼子に視線を移した。





「お前は、なにやってるんだ」



小さく息を吐き、蒼子の頭を撫でる。



「はく・・・」

「・・・お前は、こんな目に遭っても、あいつを呼ぶのか」




涙の跡の残る頬を指でなぞると、蒼子の身体を抱き上げた。




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