妖の王子さま
「・・・っ、あれは!」
多々良が声を上げた。
いずなが、こちらに向かって歩いてくるのだ。
その腕には、蒼子が抱えられていた。
「蒼子!」
白玖は、駆け寄ろうとしてハッとした。
蒼子が着ていた桜色の綺麗な着物。
それは、赤く染まり桜色の原形をとどめていなかった。
ぐったりと、いずなの腕に抱かれている蒼子。
「な、どういう事だよ!これ!」
「あなた、一体!」
牛鬼と多々良が声を上げる。
いずなは眉を寄せ白玖を睨みつけた。
「お前は、この娘をこんな目に遭わせるために俺の元から奪い返したのか」
ドスのきいた低い声が響く。