妖の王子さま



目をあけた。
蒼子の目に飛び込んできたのは、白玖の顔のドアップ。


身体を身じろぐと、蒼子の身体は白玖によって抱きしめられていた。
身体に巻きつけられる腕。
どかせそうになく、諦めて白玖の顔を見上げる。


白玖の目の横に、見える筋。



涙の痕のように見えた。




蒼子は、そっとその痕に手を伸ばす。
でも、その手は触れる前に白玖の手によって掴まれてしまった。




「あ・・・」



ゆっくりと開かれる白玖の瞳に縫い付けられるように目を放せなくなった。
あがる心拍数に、息が詰まると白玖の瞳が揺れている。



「白玖?」

「・・・っ蒼子」



切羽詰まったような声で名を呼ばれ、蒼子は白玖に強く抱きしめられた。
ズクン、と体が痛み顔をしかめると、ハッとしたように白玖が身体を離した。




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