妖の王子さま
「ねぇ多々良」
廊下に立ち、庭を眺めていた白玖が、側に控えていた多々良を呼ぶ。
「はっ」
多々良は恭しく返事をすると、白玖の側に跪く。
白玖は一度だけその姿を視界に入れると、すぐに視線を先ほどの庭に戻した。
「怪我、なんでこんなに治るの早いの」
「・・・」
ポツリと呟くように言う。
それは独り言のようにも思えるほど小さな声だ。
「ねぇ、なんで」
「白玖さまの治療に、皆が力を合わせ向かいましたゆえ」
「・・・ふぅん」
あまり興味がないように呟くと、多々良をそこに置いて部屋の中へ戻った。
多々良にとってはその方が好都合だった。
あまり詮索されあの娘の事がばれてしまってはいけない。
白玖なら、おそらく興味を示さずすぐに切り抜けることは容易いと踏んでいた。
それほどまでに、白玖は物事に興味がなかったのだ。