妖の王子さま
「でも・・・っ」
「大丈夫。私、生きてるから。白玖の、側にいれるから」
恐怖に震えた。
それでも、生きている。
また、白玖の側にいられる。
「蒼子・・・」
白玖に呼ばれる、自分の名が好きだ。
とても優しく、慈しむように呼ばれる、その名が好きだ。
白玖の、声が好きだ。
いつだって、白玖の声が自分を呼び起こしてくれる。
あるべき場所に引き戻してくれるのだ。
「白玖・・・好きよ」
小さくささやいた声。
それは、白玖に届いたのか。
蒼子は、小さな囁きを残し、再び眠りに落ちた。