妖の王子さま
「基本的には、人間の感情だろ。好きっていうのは」
「人間の?」
妖にはそう言う感情を持ち合わせていないモノの方が多い。
人間のように、惹かれ合い結ばれ子をなすという肯定がない妖の方が多いのだ。
白玖など人の姿を成すものには、そう言う感情を抱く者もいるにはいるが、人間のそれよりは、薄情なものだ。
「もっと、一緒にいたいとか、側にいると胸がドキドキするとか、側にいるだけで嬉しいとか。もっと、触れたいとか・・・」
「触れたい・・・?好きだと触れたくなる?」
「知らねぇよ。俺だって、好きになったことなんてねぇんだからよ。ああ、こういうのも聞いたな。自分のモノにしたくなるとか」
「自分のモノに・・・」
聞く話は全て、自分が蒼子に抱く気持ちに重なるような気がした。
ならば、蒼子の事を好きという事なのか。
白玖は、思い悩む。
その様子に、牛鬼は面白がって笑った。
「精一杯悩みやがれ」
小さくついた悪態を、白玖は気づかない。
何度も何度も頭の中で、牛鬼の言葉を繰り返し考える。
自分は、蒼子の事が好きなのか・・・。
そう、繰り返しながら。