妖の王子さま
生まれた時から戦うことは決まっていて。
戦うために生まれたようなもの。
幾度となく繰り返し、傷つけ傷付けられてきた数百年の歳月。
なんのために生き、なんの為に戦うのか。
そんな事すら、もうどうでもよかった。
「暇」
戦っていないと。
戦っていない時、どう生きていいのかわからないままだった。
「白玖さま」
しな垂れるような甘い声。
襖をあけ妖艶に入ってきたのは、人の姿をした狐の女。
肩を開けた妖艶な着物を身に纏い、白玖を呼ぶ。
「ああ、誰だっけ」
「まぁ、お忘れになったの?ひどいわ。天とお呼びくださいませ」
口元に細い指を寄せにんまりと色っぽく笑う。
白玖は興味なさそうにただ視線に入れていた。