妖の王子さま
一度下がった牛鬼は多々良と共に膳を運んでくる。
多々良は、蒼子を見やると、意味深に微笑んだ。
蒼子はその微笑に、ばれていることを確信し顔を俯かせた。
しかし、牛鬼も多々良もからかっているわけではなく、本心で祝福してくれていることが伝わってくるためなにも言えなかった。
「蒼子、蒼子、早く食べよう」
座った白玖が、蒼子を手招く。
食べる事を誘ってくることは、初めてだった。
「白玖・・・?」
「満たされることを知ったら、なんだかお腹がすいてきた」
そう言って笑う白玖を見て、多々良が目を見開いた。
息を詰まらせ口を抑える多々良。
「どうした?多々良」
牛鬼がそれに気づき声をかける。
多々良は、声なく首を横に振る。
「・・・多々良」
心配そうに白玖が呼ぶ。
多々良は首を何度も横に振り、呼吸を整えた後ゆっくり顔をあげた。