妖の王子さま
「すみません、白玖さまがお食事をせがまれることが初めてだったもので。感慨深く・・・感動してしまいました」
「・・・うん。そうだね」
そんな多々良に、蒼子は笑みを浮かべ頷いた。
いくら感情が豊かになってきていても、食事や睡眠に関しては関心のないままだった。
蒼子に促され口に運ぶが、自ら食に手を付けることは一度もなかったのだ。
「食べよう、白玖。きっと、美味しいよ」
「・・・うん」
白玖の隣に並び、善を前にする。
箸を手に取り、白玖は口に運んだ。
「・・・おいしい」
ポツリと呟き、次々と端を運ぶ。
口の中に溢れさせながら食べ勧めていく白玖に笑みを浮かべた。
「落ち着いて、白玖。喉詰まっちゃうよ」
少しずつ、知っていく。
喜びも、悲しみも、生きることも。
蒼子が、そのすべてをくれるのだ。
蒼子が―――――。