妖の王子さま
そっと身をかがめ、触れるだけのキスを落とす。
白玖は嬉しそうにニッと笑う。
その笑顔を見ると、まぁいいか、と思ってしまうのだ。
白玖は、よく笑うようになった。
表情がなくとも、妖艶で美しい風貌の白玖は人目を惹く。
しかし、表情が生まれると、それに無邪気さが加わる。
「このまま、穏やかな日々が続けばいいのに・・・」
蒼子は呟いた。
そんなことは、無理だとわかっている。
白玖は、黄の国の長。
戦うことを求められている。
白玖の下につく妖たちのためにも。
「・・・蒼子?」
白玖の手が頬に触れる。
蒼子は心中を察せられないよう微笑み返し、頬に添えられた手に手を重ねた。
それでも。
側にいたい。
自分にできることをしたい。
白玖を、支えたい。
その想いを強くさせた。