妖の王子さま



「白玖さま!」



静けさが消え、バタバタと慌ただしい足音が聞こえる。
蒼子はビクッと体を震わせ、その騒ぎの方へと視線を向けた。


胸が痛む。
その意味に、気づいてしまうから。




「・・・多々良?」

「鬼どもが、攻めて来ます!」

「朱鬼か・・・」

「このところ、朱鬼の動きはめまぐるしく、精力的に争いを起こして行っているようです。ついに、こっちにまで・・・」

「わかった。すぐ行く。着替えるから、出陣の準備整えて置いて」

「はっ!」



さっきまでの穏やかな雰囲気から、ピリッとした雰囲気に変わる。
白玖を纏う空気も変わった。

そのことに、小さく胸を痛めながら白玖を見上げた。




「蒼子、待っててね。いってくる」

「白玖・・・」

「大丈夫だよ。絶対に、帰ってくるから」



白玖は、蒼子の頭を撫でそう言うと部屋を出て行った。





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