妖の王子さま



「多々良・・・」

「すみません。今回ばかりは・・・。この間のことがありますから。蒼子さんに何かあっては・・・」

「・・・うん。そうだよね。・・・ごめん」



一瞬、あの時の朱鬼の暴挙を思い出し身体が震えた。
我儘は言えないと、ついていきたい想いを抑え込む。

心配で仕方がなかった。
怪我をせず戻ってきた日などないのだから。




「・・・大丈夫ですよ。我々も、白玖さまをお守りしますから」

「う、ん。多々良も、無事で」

「はい。ありがとうございます」



無力だ。
なにもできない自分。


できるのは、起きた後だけ。



多々良も出て行った部屋に一人。
蒼子は残された。



立ち上がり外を覗こうと襖に手をかけたその時、心臓がズクン、と痛み蹲る。



「っ」




まただ。
時々、胸の痛みが走るようになっていた。
しばらくすると治まるそれに、蒼子は首をかしげる。



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