妖の王子さま



どれ程時がたったのだろうか。
屋敷がにぎやかになったのは、日が傾き夕暮れになってからだった。



待っていられず、蒼子は部屋を飛び出した。
いつも戻ってきたら白玖が入る部屋の方へ走る。


どうか、どうか、無事でいて。




「白玖!」



廊下で白玖を見つけた。
白玖は、牛鬼に支えられながら歩いている。
意識はあるようだが、その体は血で赤く染まっていた。




「白玖!」

「蒼子、来たらだめだよ」

「え?」

「来ないで、蒼子」



厳しい声でそう言われ、蒼子は足を止める。
突き放されたような思いに眉を下げ白玖を見上げた。




「白玖・・・?」

「蒼子を、巻き込みたくない」



白玖は、そう言って目を伏せる。





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