妖の王子さま
「白玖」
「・・・ごめん。蒼子。でも、蒼子に力を使ってほしくないんだ」
白玖は苦しげに顔を歪め、牛鬼に支えられながら腰を下ろした。
蒼子はそんな白玖を見つめ、なにもさせてもらえない自分の無力さに目を伏せた。
「蒼子さん、傷の手当てを」
「おいらが!!」
志多良が名乗りを上げ、蒼子が受け取った傷の手当てを施す。
多々良は牛鬼と共に白玖の手当てにあたった。
「・・・私は、平気だから。志多良も白玖を・・・」
「大丈夫だよ。蒼子。そんな顔するな!」
志多良は笑ってそう言う。
蒼子は小さく頷いて手当てを受けている白玖を見た。
白玖の想いもわかる。
自分の事を思ってくれていることは。
それでも、自分にはその力しかないのだ。
白玖の役に立てるのは、この力しか。
蒼子は、小さく息を吐いた。