妖の王子さま
「は、はい。そうです。傷を移す力が・・・」
多々良は驚いたように目を見開くとそう答えた。
覚の力を、初めて目にしたのだ。
半信半疑だったその力を目の当たりにして驚きとともに、これで助かるかもしれないと安堵を浮かべた。
「この半年の間に、かなりその力を酷使しているようですね」
「・・・は、はい」
「この娘自身も、自分の意思でこの力を使おうとしているのが視えます」
「そうです」
「白玖さまの、力になりたい。なにもできないのが辛い。・・・ずっと、聞こえます」
その言葉に、白玖は蒼子を見つめた。
力を使うことを拒んだことを、そんな風に思っていたのかと、初めて知った。
「傷を癒す力。それは、万能だとお思いですか?」
「え?」
鋭い視線が、白玖を見る。
白玖は顔をあげ覚の視線を受けた。
「このままでは、この娘は死に至るでしょう」
はっきりと、そう告げられた。