妖の王子さま
「蒼子・・・好きだよ」
「・・・うん」
「好きだから。・・・離れたくないんだ」
そう囁くその声は切なく、苦しげで。
切羽詰まったその想いに、蒼子は胸が詰まった。
心配、かけてしまったのだろうか。
なにが起きたのか理解できないが、白玖が自分を思ってくれていることはわかった。
「蒼子・・・」
何度も何度も呼ばれる名前。
それが嬉しくて、愛しくて仕方なかった。
それでも、今よばれるその名前は、とても儚く心もとない。
今にも消え入りそうな声だった。
「白玖?どうしたの・・・?」
「・・・蒼子が目が覚めて、嬉しいんだ」
白玖が、誤魔化すようにそう言った。
蒼子の顔の横に手をつくと、身体を落としていく。
唇を重ね合わせ、互いの存在を確かめ合った。