妖の王子さま
「このところの鬼の動向が激しくなっています」
白玖と蒼子が部屋で寛いでいた時、多々良が神妙な顔で話を切り出した。
「あの祭りの時からなりふり構わずといった感じが見受けられていましたから・・・」
「畳み掛けようとしてるのかな」
「はい。一気に潰すつもりかもしれません」
動き出していた。
なにかが、着実に。
今まで何年何百年と続いてきた終わりのない戦い。
変わる時が来ているのかもしれない。
「明日、大掛かりな戦をしかけてくるとの調べがついています。おそらく、天狗たちも出てくるでしょう」
「・・・うん。明日、おれたちも出陣しよう」
白玖が真剣にそう言った。
蒼子は白玖を見る。
見たことのないような真っ直ぐな力強い眼差し。
覚悟を決めたような瞳に、蒼子は少し胸騒ぎがした。
「白玖・・・?」
「蒼子、大丈夫だよ。心配しないで」
白玖が蒼子の頬に手を添え笑った。
心配するな、そんなこと無理だと蒼子は思う。