妖の王子さま
そして二人が出会う時
あれから、どれくらい経ったんだろう。
真っ暗なこの場所ではいつ夜が来て朝がくるのかわからない。
時間だけが無情に流れていく中で、時々呼び出されては白玖の怪我を治すだけの日々を送っていた。
こっそりと隠すように連れて行かれ、目を覚まさないうちに戻される。
ただの道具のような扱いに、身も心も傷つきボロボロになっていた。
身体の傷も、治るとはいえ痛みは伴う。
戦いで負った傷だと言っていたが、どれ程の戦いなのだろう。
あんなにボロボロになるまで戦う意味は、どこにあるのだろう。
妖を統べる者を決める。
それはどれほど重大で、大いなることなのだろう。
傷付け傷つき、いろんなものをなくす中でそれほどまでに大事なことなんだろうか。
考える時間だけは十分にあった。
帰りたいと思える場所は特にないけれど、こんな生活を望んでいたわけでもない。
こんな力があるからいけないのだ。
こんな力さえ、なかったら。
こんな思いすることなんてなかったのに。