妖の王子さま



「白玖・・・?まじかよ」




牛鬼も、驚きに声を上げる。
白玖は、蒼子や牛鬼に顔を合わせると小さく頷いた。




「いがみ合うのはもう終わりにしよう。気づいたんだ。争いでは何も生まれないって」

「・・・ああ。そうだな」

「だから、この世をお前に、託す」

「それで、本当にいいんだな」

「ああ。おれは、蒼子がいてくれたらそれでいい」




白玖はそう言って穏やかに笑った。
それほどまでの穏やかな笑顔を見たことがあっただろうか。
いずなは驚きに一瞬目を見開くかふ、と落とすように笑い返した。



「ほんと、お前は変ったな」

「うん。蒼子のおかげだ」

「そうか。・・・よし」




いずなは、辺りを見渡す。
傷だらけの妖たちに向かい声を上げる。




「これより、この妖の世はこの俺、いずなが治める!狐も鬼もまとめて俺が面倒見てやる!争いは一切やめ、これより手を取り合ってこの世を変えていこうぞ!」



いずなが高々と宣言した。
一気に妖たちが湧き上がる。
一体感が、生まれた瞬間だった。




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