妖の王子さま
「本当に、いいの?」
「うん。もうここに俺の居場所はないよ」
白玖は、蒼子を連れ屋敷の門のところに立っていた。
振り向き屋敷を見上げると、思い出を断ち切るように顔を反らし蒼子を見た。
「蒼子、一緒に来てくれる?」
「うん。白玖、私も一緒に連れて行って」
どちらともなく手をつなぎ歩き出す。
過ごした場所に背を向けて。
新たに道を作っていく。
2人でなら、どこででも生きて行ける。
本気で、そう思った。
「妖たちの住む場所があるんだ。そこに小さな家を用意したから」
「うん」
「そこで一緒に過ごそう」