妖の王子さま
白玖が用意した家は、屋敷に比べるととても小さな家だった。
それでも、ここから新しい日々が始まるのだ。
最初は大変だった。
生活が軌道に乗るまではとても忙しい日々だった。
それでも、二人で協力してやればどんなことでも笑に変えられた。
白玖は、その幸せを噛みしめ。
蒼子も、喜びに笑顔を増した。
「白玖ー!お茶にしよう」
「ああ、うん」
「なにしてたの?」
「面白そうな本を見つけたんだ。だから読んでみようと思って」
長としての仕事がなくなった白玖は開いた時間で読書を始めた。
蒼子も、花を育ててみたりと時間を思い思いに過ごしていた。
穏やかな日々。
笑顔に溢れる日々に満足していた。
それでも、少しだけ思い返すのは。
あの賑やかだった日々。
多々良や志多良、牛鬼に囲まれ賑わっていた日々。