妖の王子さま



「あなた、名前は白玖でいいの?」

「そう」

「・・・そう。えと、私は蓮井蒼子。蒼子っていうの」



なぜ自己紹介なんてしてしまったのだろう。
関わり合いたくはないのに。


関わると、情ができてしまう。
そうなれば自分の性格上助けたいと思ってしまう。



そんな、悪循環でしかないのに。




「あおこ」

「う、うん」



しかし、なんだろう。
この白玖という男からは何も感じない。


自分への興味も感情も。
それはなぜなんだろう。

何か不自然なものを感じるのに、蒼子にはその原因がわからない。




「蒼子」




確かめるように呟かれた自分の名前にも、なんの感情も込められていない。
ただひらがなを並べて発せられただけのような。
悲しい。とすら思う。




ああ、そうか。




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