妖の王子さま
表情がないのだ。
笑いもしないし、怒ったり悲しんだり、表情がないから感情も読み取れない。
声の抑揚もあまりないから、余計。
興味を持たない。
そんな印象を受けた。
「なんで私を連れてきたの?」
「・・・さあ」
その理由でさえ、自分では説明できないという。
白玖は蒼子の手を引き力任せに座らせる。
そして、座ったその膝の上に頭を乗せ横になった。
「え・・・?」
「枕になって」
突然連れ出しておいて枕になれとはどういう事だ。
枕になるために連れ出したのか?
いや、今突然思いついたに違いない。
だってさっきは、さあ、とか言っていたのだから。
戸惑いながらも蒼子は、白玖の頭をどかすことはできなかった。
瞳を閉じ、あっという間にすやすやと寝息を立て始めてしまったのだ。
「早・・・」
そんな早業に、呆れかえる蒼子であった。