妖の王子さま
いつまで彼は、こうしているつもりだろう。
どれくらい経ったかはわからない。
ただ、さっきまで明るかった空はすっかり暗くなっていた。
蒼子は、いい加減足が痺れて来たのでどうにかしたかったが、起きる様子はない。
どうしたものかと思考を巡らせる。
あどけない寝顔は、まるで子供のよう。
「可愛い」
ふと無意識に出てきた言葉だった。
自分が誰のせいでこんな目に遭っているのか。
それを忘れたわけではなかったのに。
ダメだ、もうやめてほしいと言わなければならないのに。
もうすでに、軽く情が出てきているのか。
もう、あんな思いはしたくはないのに。
「・・・ん」
パチッとあけられた瞳と目が合う。
あまりに突然すぎて、目をそらすことも忘れしばらく見つめあってしまう。
「あれ・・・。おれ寝てた?」
きょとん顔でそう呟くとそっと身体を起こした。