妖の王子さま
それでも、冷たいと思う。
白玖の瞳は、酷く冷たく残酷に思えた。
「食べ・・・ないの・・・?」
飲み込まれそうな思いに言葉を詰まらせながら絞り出した声。
白玖はボーッと蒼子を見ると、フッと頭を垂れ蒼子の方におでこを乗せた。
「えっ、あ、あの!」
突然の事に慌てる蒼子だったが、白玖は動じず蒼子の肩に頭をもたげたままじっとしている。
そして、そっと上がった頭が蒼子の首元に近づくと、すんと鼻を鳴らされる。
ドキッとして慌てて首を手で抑える。
「蒼子、いい匂いするね」
「えっ!?に、に、匂いって!」
動揺した蒼子は片手に持っていたお味噌汁を落としてしまう。
「あっ」
カラカラと畳の上で舞うお椀。
制服のスカートを濡らす汁。