妖の王子さま
なんでこんなことになっているんだろう。
どうして、恋人でもないむしろ人間でもない人と一緒にお風呂なんて。
しかし、お風呂に入りたいという願望と、有無を言わさない白玖に今、この状態だ。
「はぁ・・・」
どうにか、自分が入ってから入ってきてほしいと頼み込んだ蒼子は、急いで体を洗い湯の中に入る。
お風呂は、露天風呂になっていて、石で囲われた趣ある温泉だ。
タオルを身体に巻きつけお湯に肩までつかる。
「いい?」
脱衣場から声がして、肩を震わせた。
このまま黙っていれば、白玖は入ってこないだろうか。
そんなことを考えていたら、カラカラと音がして扉が開いた。
「えっ、あ、」
「・・・返事ないから」
返事がないからと言って入ってくるやつがあるか!!!
白玖は自由人だと、知っていたはずなのに。
黙っていればなんて、無駄な抵抗だったと気付くべきだった。
蒼子はさらにプクプクとお湯の中に沈んだ。