妖の王子さま



入ってきた白玖は、洗い場に向かう。
無駄な肉のまったくついていない、細身の身体。
適度な筋肉がその体を色っぽく引き立てていた。




思わず見惚れてしまっていたことに気づき蒼子は後ろを向いた。
男の人の裸なんて、初めて見たのだ。


ドキドキと心拍数をあげ、逃げ出したい気持ちを高鳴らせた。





お湯が揺れる感覚にハッとすると、白玖が湯船に入ってきていた。
慌てて逃げようと足をばたつかせると、地面の石につまずきバランスを崩しお湯の中に沈んだ。




「・・・あ・・・ぷっ・・・」




突然の事に溺れかける蒼子。
その体は急に起き上りふわっと抱き寄せられた。





「げほっ・・・・」




飲み込んでしまった水を吐き出し、苦しそうに咳をする。




「なにしてんの」




呆れた声が間近で聞こえ顔をあげると、白玖の顔が至近距離にある。
蒼子の身体は白玖の膝の上に抱きかかえられていた。





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