妖の王子さま
多々良も、そのようなことを言っていたような気がするし。
「・・・蒼子は、野良狐なの?」
「・・・え?」
「上手に化けてるね」
よしよしと頭を撫でられ胸が高鳴る。
こういう事をサラリと、何の気なしにやってしまう。
いちいちこういう事にドキドキしていたら身が持たないのではないかと不安になる。
「わ、私は、人間!狐じゃないし、化けてもないの!」
「人間?・・・へぇ。そうか。だからこんなにいい匂いがするのかな?美味しそうなにおい」
首元に寄せられた鼻。
すん、と匂いをかがれビクッと体を震わせる。
美味しそうな、匂い・・・?
「よ、妖怪って・・・人間を食べるの!?」
「どうかな?」
ギラリと瞳が光る。
お湯で火照った体から血の気がサーッと落ちていく。
食べられる。
そんな恐怖に、目が回り、そのまま気を失ってしまった――――――。