妖の王子さま



どれ程の時間がたったのか、静けさの漂う屋敷の中に再び騒々しさが戻った。
鬼気迫る慌ただしさに、やはり怪我をしてしまったのだと胸を痛める。




いてもたってもいられず立ち上がると襖を開け、慌てて廊下に飛び出した。
様々な妖怪たちが慌ただしく廊下を行きかう。

状況を教えてほしいのに、声をかけ辛い状況に蒼子は戸惑った。




「蒼子さん!」




そこに、多々良が慌てた様子で駆け寄ってきたのだ。
自分を求めてやってきてくれた多々良にようやく状況がわかるとホッとするが、多々良の表情を見て、その状況が思わしくないことを悟ってしまう。





「多々良さん、あの・・・」

「話している時間は・・・、とにかくすぐに来てください!」




有無を言わさず手をひかれ連れられる。
これからさせられるのは、自分の身体を傷付けること。


それなのに、蒼子の心もまた早く早くと急かされていた。




連れてこられたのは、いつもの部屋だ。
多々良たちが到着すると、志多良がすぐに他のものたちを外に出す。
蒼子の力の事は、伏せられているのだ。





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