妖の王子さま
「・・・っ」
部屋に入り、蒼子の目に飛び込んできたのは着物を真っ赤に染め上げぐったりと横たわる白玖の姿だった。
着物から伸びる腕にも、傷跡が無数に。
肩から胸のあたりまで左から斜めに着物が切り裂かれていた。
「ひどい・・・」
息が細く、このまま死んでしまうのではないか。
そんな不安に急かされ、慌てて白玖の身体に触れる。
こみ上げる涙を拭いもせず目を閉じ集中する。
どうしてだろう。
こんなにも、助けたいと思ってしまう。
こんな生活、いやでいやで仕方がないのに。
こんな風に目の前で傷つく姿を見たくない。
「・・・っ」
身体を引き裂くような痛み。
クラクラと、意識が飛びそうなほどの痛みに耐えながら蒼子は必死に白玖の身体にしがみ付いた。