妖の王子さま
「いけない!これ以上は!やめなさい!蒼子さん!」
蒼子の様子に気づいた多々良は、慌てて白玖から蒼子を引き放そうとする。
妖怪である白玖でも、危ういケガを人間である蒼子がすべてを引き受けられるはずがない。
それなのに。
自分では制御できない能力なのだと以前知った。
「ま、だ・・・、まだ傷がっ・・・」
「大丈夫です!十分です!あとは、白玖さまのお力で!」
それでもまだ白玖に手を伸ばそうとする蒼子の身体を強く抱きしめ引き止めた。
あんなにも嫌がっていたはずなのに。
どうしてこんなにも必死で助けようとするのだ。
人間なのに。
意識を手放し自分の腕の中でぐったりした蒼子を抱きしめながら多々良は苦しげに顔をしかめた。
こんなはずではなかった。