妖の王子さま
白玖は、着流し姿で外廊下に座り、自分の掌をまじまじと見ていた。
「白玖さま、お体に障ります。もう少しお休みください」
それを見つけた多々良は、白玖にそう告げた。
白玖はその言葉にピクリともせず、ただその手を見下ろしている。
「蒼子は」
白玖がそう呟く。
多々良はピクッと肩を揺らすが、動揺を悟られまいと落ち着かせるように目を閉じた。
「少し、下働きを手伝ってもらっています」
「呼んできて」
「いえ、少し立て込んでおりまして」
「いいから、すぐ」
ここまで、白玖が何かに執着することなど今までになかった。
なにが、白玖の中で起きているというのか。
多々良は言葉を見つけられずただ白玖を見つめた。
「なにしてる。早く」
「・・・すみません。白玖さまの命令でも、今それはできないのです」