妖の王子さま
「お労しい白玖さま、私が慰めて差し上げますわ」
天はそう言って白玖の身体に寄り添った。
しかし、白玖は天の腕を力任せに掴むとそのまま庭へと突き落としてしまった。
「きゃあっ」
「うるさい」
低くそう言い捨てると、立ち上がり襖をあけ部屋の中に入っていってしまった。
見たことのない白玖の姿に、戸惑う多々良と天であった。
「な、なんなの・・・っ」
はしたない格好で庭にこけた天は、恥ずかしそうに着物を正して逃げるようにその場を去った。
その背中を見送りながら、多々良は頭を悩ませていた。
それほどまでに、あの人間の娘が白玖の中で大きくなっているという事か。
白玖というそのものを覆す力を、持っているという事か。
なにが、そうさせているのか。
あの娘に、どんな力があるのか。
多々良には、理解はできなかった。