妖の王子さま
しかし、このままではまずいと多々良は蒼子のもとに向かった。
恐らく、傷の治りが早すぎる事にも疑問を持ち始めているのだろうと多々良は推測する。
自分の手をじっと見つめていた白玖。
きっと、そういう理由からだろう。
牢に降り、志多良に声をかけると蒼子の側に立った。
「・・・多々良、さん」
意識が戻ったらしい蒼子は、熱は下がり布団に横になっていた。
しかしまだ顔色は青く、完全に復活したとは言えない状況であった。
「血を流しすぎてるみたいなんだ・・・。傷は治るけど、失った血はそうはいかないみたい」
志多良がそう説明する。
もともと人間の身体だ。
かなり負担になっていることだろう。
しかし、やめるわけにはいかないのだと。
白玖がこの世界を統べるためには必要な犠牲。
この娘には、まだまだ白玖を支えてもらわねば困る。
多々良は、再度その思いを強くした。
白玖の変化が、いい方向へといってくれることを信じて。