妖の王子さま
白玖に連れられ部屋の中に入っていく蒼子を見つめていた多々良と志多良。
「やっぱ、まだ無茶だよ・・・。眩暈でフラフラだし、きっと吐き気だって酷いはずだよ」
「・・・仕方ありません。蒼子さんに無理をしてもらうしか・・・」
心配そうな志多良と、同じように心配しながらも心を鬼にする多々良。
それ以上はここにいてもできることはないと、ならばせめて、血に変わるような料理を作って運んでやろうと立ち上がる。
心が痛まないわけではなかった。
人間だと下等な生物だと蔑んでいる自分だが。
そんな人間に頼っている。
そして、それがあのような人間であった事。
もっと、違う人間なら良かったと。
罪悪感など抱かぬような。
利用して利用しつくしてしまえるような。
そんなことを考えてしまう自分は、弱いのだろうか。