妖の王子さま
白玖は、眠りに落ちた蒼子を見下ろす。
そっと目じりに残る涙を指ですくう。
ペロッとその涙を舐める。
「しょっぱ・・・」
涙。
初めて見た涙。
その味は、とてもしょっぱく切ない味がした。
人間の女。
こんなにも、気になってしまうのは、見たことのない人間だったからだろうか。
なぜ、妖の世界であるここにいるのかと。
自分の中に湧き上がる理由のわからない名の知らない気持ちを。
どう処理していいのか、わからずにいた。
蒼子の着物のあわせをそっと開いた。
露わになる胸元、すべすべの人間の女の肌。
その肌に似合わない赤い痕を見つけた。
左の肩から斜めにはいる赤い痕。
ふと、自分の左肩に触れる。