妖の王子さま
気づかれてはいけないんだ。
多々良が、必死になって隠そうとしてる。
言っていたのだ。
人間である自分が関わっていることをあまりよく思っていない妖怪がいるのだと。
その妖怪たちにも人間である蒼子に命を救われていると知れたら、白玖の威厳を損ないかねないと。
そうでなくても、白玖さまには敵が多いというのに―――――。
そう言っていた多々良の言葉を思い出す。
蒼子を自室に連れ込んだ後、独り言のように言われたことだった。
「そんな力、あるわけないよ。人間は妖怪と違って寿命だって短いし、か弱いものだから」
蒼子は、誤魔化すようにそう言った。
ウソなんか言ってはいない。
だって、人間にそんな力はないのだから。
自分が特殊なのだ。
不気味で、奇妙。
自分だけが、そうなのだ。
「じゃあ―――――」
白玖が伸ばした手が着物の襟をつかむ。
グイッと強引にひかれた手に、着物の合せは乱された。