妖の王子さま
「偶然・・・、これは、そんなんじゃないから。そんな力、あるわけないでしょう?」
逃れるようにそう早口で言い切るとくらくらした頭に体が前のめりに倒れこむ。
白玖はその体を抱きとめることもせずすっと立ち上がった。
蒼子は畳の上に体を打ち付けるように倒れた。
「ふぅん」
白玖はそう告げると、部屋を出て行ってしまった。
残された蒼子は、震える手で着物を合わせをぎゅっと引き集めポロポロと涙を流した。
白玖に触れられたところが熱い。
いうことを聞かない身体。
自分の気持ちがわからない。
白玖に本当の事を告げれば、もしかしたら元の世界に戻してもらえるかもしれないのに。
こんな生活から抜け出せるかもしれないのに。