妖の王子さま
「多々良、お前は出て行け」
「し、しかし・・・っ」
言いつけられた言葉に抵抗を示すが、白玖は聞く耳を持たず、仕方なく多々良は部屋を出た。
とうとう、ばれてしまったのだ。
白玖にまで。
多々良は、苦しげに頭を抱えた。
「なんで、嘘ついた」
「・・・白玖、動いたら・・・。怪我してるのに」
「おれのことなんてどうでもいい。おれの質問に答えろ」
誤魔化すように言った言葉にも、白玖は切り捨てただまっすぐ蒼子を見据える。
ならば、と蒼子は開いていた左手で白玖の身体に触れた。
どうせばれてしまったのなら。
いっそのこと、このケガをすべて自分に移してしまおう。
我ながらバカだと思う。
どうして、こんなことをしてしまうのか。
どうして、自ら傷つく道を進んでいくのか。
グ、とこめられた手に白玖は目を見張った。