妖の王子さま



「や、やめろっ!」




蒼子のしようとしたことに気づき、白玖は慌てて突き飛ばすように蒼子を離した。
畳の上に倒れた蒼子の身体には、傷が増えていた。
代わりに自分の身体が軽くなったように痛みが消えている。

白玖は、自分の手を見つめ青ざめた表情で畳に倒れる蒼子を見た。




「あおこ、・・・あおこ!あおこ・・・っ」




確かめるように何度も名前を呼ぶ。
じんわりと着物を濡らしていく赤に、身体が震えた。



この気持ちをなんと呼ぶ?




初めて感じる気持ちだ。




心が、震える。
身体が、震えて落ち着かない。




震える身体を引き起こし、蒼子の側に寄る。
蒼子の身体に触れ、頬を、肩を、手を・・・撫でるように触れていく。




「死ぬな・・・、蒼子、死ぬな」




白玖の声に目をあけた蒼子は、フッと笑って手を伸ばした。
白玖の頬に添えられた蒼子の手は暖かかった。




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