妖の王子さま
「私も、準備してきます。蒼子さんは、帰還に備えておいてください」
「・・・多々良、お願い、私も連れて行って」
「蒼子さん?なにを言ってるんですか。遊びじゃないんですよ」
「わかってる!でも、ただ怪我した白玖を待ってるだけなんて嫌だ。何が起きてて、どうなっているのか、私もこの目で見たい」
いつも聞かされるのは結果だけ。
ただ、屋敷で皆が帰ってくるのを待って。
傷だらけの白玖のもとに走る。
「白玖の事を、知りたいんです!私には、その権利はあるでしょう?」
「蒼子さん・・・。わかりました。でも、絶対に私の側から離れないでください」
「ありがとう!」
なにもできることはない。
それでも、ただ待っていることはできない。
白玖がいつもなにと戦い、傷つけられているのか。
「この着物を羽織っていてください。これを着ていれば、蒼子さんの人間の匂いもかき消されます」
「うん・・・」
言われたとおり蒼子はその着物を羽織る。
そして、多々良に連れられ決戦の地に向かった。