妖の王子さま
そこは、どんよりと暗い暑い雲のかかった一面の野原。
草が風にそよそよと靡く。
白玖が引き連れる黄の国の軍はやってくる天狗の蒼の国の軍を待ち構えるようにして構えていた。
まるで、戦国時代とかの戦の光景だ。
蒼子は、テレビで見たことのあるようなその光景に息をのむ。
そんな光景が、今目の前に広がっているのだ。
白玖は九尾の尻尾を風に揺らし狩衣を身に纏いただ悠然と立っていた。
「白玖・・・」
「蒼子さん、あまり身を乗り出しては危険です。できるだけ隠れて」
「・・・う、うん」
多々良に肩を掴まれ引き戻された蒼子はおとなしく多々良の後ろに控えた。
これから戦いが始まる。
「いつもいつも、虫けらどもを引き連れてご苦労なこったな!狐よ!」
大きな羽音と共に、甲高く笑う声が現れた。
空をさらに黒く染め上げる漆黒の羽。
真っ黒な髪、背中には真っ黒な羽を持った男が、白玖の前に現れたのだ。