子犬物語。
 人の手により捨てられ、ダンボールの中で兄妹のいちごと嵐を体験したメロンは、雨によりふやけて簡単に破れたダンボールの外へと出ていた。
 目に映るもの全てが初めて見るものばかり。好奇心に目を輝かせ忙しく周りをきょろきょろと見渡しながら、道を歩いていくと十字路に出た。

 どうしよう……。
 戻ろうかな? あんまり離れるのも良くないと思うし……。

 元気のないいちごも気になっていた。
 後方を振り返るといちごが残っていたはずのダンボールが見えない。さっきまで自分がいた場所からかなり歩いていたらしい。

 やっぱり戻ろう!
 いちごが起きて、ぼくを探しているかもしれない!

 次の瞬間には駆け出していた。
 その時、

「あっ!」

 駆け出したメロンの前に突然大きな黒い影が現れた。避けようと思ったものの勢いは止まらず、それにぶつかってしまった。ぶつかった勢いでコロコロと後ろへひっくり返ってしまう。
 何にぶつかったのだろうと、首を振りながら慌てて起き上がる。目の前にいたのは黒く薄汚れ、毛並みもぼろぼろの大きな犬だった。

 仲間だ!
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