私は、生きてる。
「おまえだ。その、不思議な声だった。聞き間違える筈がない。俺は人より耳が良いんだ」
あたしの長く伸びた髪に草がついていたようで、それを取りながら男は言った。
「っ……」
「なにが辛い?なにが苦しい?なにが怖い?全部、取っ払ってやる」
早く早くと焦る身体はいつの間にか震え、歯はガチガチと鳴っていた。
「大丈夫、俺が助けてやる。俺たちが味方になってやる」
男の背後にはいつの間にか4人の男。
4人全員、タイプは違うが目前の男同様とても整った顔をしていた。
「ぅ…ぁ…」
言葉にならない声。
目前の男たちがとても、優しく見えた。
目前の男たちがとても、強く見えた。
目前の男たちがとても、頼もしく見えた。
「たす…けて…助けて…
お願い…あたしを…あたしを助けて…
どこか、誰も知らないところまで…」
「あぁ、連れてってやるさ。誰も知らない、新しい場所へ」
言葉を遮るようにあたしを抱き締め、耳元で力強く、優しく囁く男。
この日あたしは、見ず知らずの男に望んで連れ去られた。