あの日とあの場所に
俺が彼女を好きになったのは高校1年の夏だ。その時までは彼女のことは何とも思っていなかった。むしろ話したことがなかった。

俺の高校は夏休みの初日から一週間、夏期補講がある。「どこが夏休みなんだよ」や「夏休みじゃないだろ」などブーイングが起きる。俺は午前中しかやらないので楽だと思っていた。
午後はカラオケ行ったり、ゲームセンターへ行ったり、家に帰ったりしている人、それぞれだ。

俺は斗真と一緒に本屋にいた。
斗真は参考書籍を探しに行ってしまい。
俺は漫画コーナーにいた。

「須藤君?」

振り返ると黒髪のポニーテイルの少女。彩花がいた。

「え、え~と山下さんだっけ?」

「え...違うけど」

「え?マジ?ごめん」

当時の俺は、男子とは良く話しをして、女子とは全く話さず名前すらよく覚えていなかった。

休み時間よく男子から「ヤマシタ」とよく聞いたからとりあえず、当てずっぽうで言ってしまった。

「あ、ご、ごめん。」

すると彼女は「ぷっ」っと吹き、「合ってるよ。山下です」とニコッと笑いながら言った。

ズバキューン俺の心に何かが撃ち抜かれた。こんな可愛い女子がクラスにいたのか、と思っていた。

「須藤君ひとり?」

「いや、残念ながら斗真もいる」

残念ってなんだ?

「残念って...須藤君もこの漫画読むんだぁ」

「うん。今一番ハマってる。山下さんも読むの?」

おお、なんか俺、今女の子と会話している。まぁ中学の時も普通に話してたけど...

「うん。うち兄貴いるからたまに漫画買ってこいと頼まれてついでに読むの。そしたらハマっちゃった」

そんな話しをして5分くらい経ち「そろそろ私行くね」っと別れようとしたとき、「あ、」と言いながら彼女はスマホを取り出し言った。

「良かったらアドレス交換しようよ」

へ?今なんて言った?アドレス交換?

「ごめん。今なんて言ったの?」

「え?アドレス交換しよって。」

うぉぉぉぉ~きたぁぁぁーついにきたぁぁぁぁー。

いや、待て落ち着け俺の心臓。まだリア充になったわけではない。落ち着け。

「もしかして須藤君彼女いた?」

「いや、いないいない。むしろ募集中です。良かったら...」

って何言ってるんだ俺。落ち着けよ。死ねよ。撃たれろよ。

そして俺は彩花とアドレスを交換した。高校で交換した女の子第一号だ。その時の俺はすごくテンションが高かく、斗真に「キモい」と言われたっけな。

しかし、西田とメールしたのはテスト範囲の確認や、新年のあいさつメールぐらいしかなかった。

 そして2年になって斗真と里菜と同じクラスになりさらには彩花とも。斗真と里菜のおかげで彩花と話す機会が増えたが、それ以上の発展はなく今にいたる。

そして、今俺は、晴翔の体で彩花と会っている。しかし、俺の家になんの用だ?

「あ、あの」

っと彩花がとても小さな声で話しかけてきた。

「あ、は、はいっ」

ついあわててしまう。

「須藤君の友達ですか?」

「え?あ、はい友達です」

また友達って言っちゃったよ。俺も知らないよ。

「私、須藤君のクラスメイトの山下です。」

「須藤の友達の今井です。」

「・・・」

お互い謎の沈黙

「あの…ひとつ聞いていいですか?」

「はい。なんでしょうか?」

そう言って彩花が口を開いた。

「変なことを聞きますが、今井さんは、須藤君の亡くなった原因は知っていますか?」

「あ、はい。喧嘩を止めようとして、バットが頭に当たったと聞いています。」

そう言うと彩花は少し考えこむように、下をむいて口をひらいた。

「実は、大井君が亡くなった原因は私なんです。」

え?違うの?どう言うことだ?

「え?どう言うことですか?」

「須藤君は、あの時…私を守って亡くなったんです。もし、あの時私が早く喧嘩から離れていれば…須藤君は…」

彩花の目から涙が出てきた。
そうか。。。彩花は俺がが死んだことに責任を感じているのか。
でも違う。違うんだ。俺は山下を守ってやりたかったんだ。

「だから、私のせいなんです。」

「それは違う。」

「え?」

やべぇ…つい言っちゃった。

「多分、敬は…あなたを守りかったんだと思います。あいつは、自分より他人を見ます。昔っからそうなんですだから自分のせいなんで思わないでください。」

って何言ってんだ俺。キモイわ。やべーちょー引くわ。

「同じこと。須藤君のお姉さんにも言われました。」

姉ちゃんが?たまにはいいこと言うんだな。

「須藤の分も生きてください。」

俺はそう言った。いや、その言葉しかみつからなかった。

「はい」彩花はそういい、少し笑みを見せた。目は赤く充血していたが涙はなかった。

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